『思いは胸の奥に 決意はこの手に』




Side ???
ある日少年は、事故で家族を失いました。

少年は泣きませんでした。

それは、昔の約束。けれど、あの少女は覚えていないでしょう。

少年は聞かれました。


「どうして泣かないんだい?お父さんとお母さんが死んじゃったんだよ?」


少年は何も考えませんでした。いえ、考える必要がありませんでした。


「約束があるから、泣けない。泣いたって、何も変わらない。なら、進むしかないじゃないですか」


聞いた人は、唖然としていました。

それも当然です。彼はまだ、9歳。まだお母さんに甘えていてもおかしくありません。

けれど、少年の答えは、大人でも答えられないモノです。

誰も少年を、咎めはできませんでした。

それもそうです。その答えは、大人達が考えていたモノより、上なのですから。

そして少年は、ある家の養子となりました。

その家は、元々暗殺術として太刀を使った流派を、代々受け継がせるという家です。

その名は水瀬。水のように変幻自在に、瀬のように滑らかに…。

少年は12歳で免許皆伝をしました。そして、少年の師であり、当主でもある義父は言いました。


「何故家の誘いを乗ったか、教えてくれないか?」


少年の答えは、三年前から決まっていました。


「誰かを救うには、体も心も強くならなくてはならない。全てを救う事は無理でも…、
守りたいと思えるモノを見つけた時、守れる力が欲しかった。例えそれが、世界から拒絶されても、
俺はその守りたいモノのために、味方で有り続ける。それが、俺の決めた道」


当主は驚きました。まだ小学6年生の彼が、免許皆伝をし、答えられないと思った答えにも、

明確に答えたからです。その言葉で当主は、決心がつきました。


「…そうか。ならば、この太刀を持っていけ」


その刀の名は「虎鉄」有名な「近藤勇」が持っていた刀である。

だが、それは刀であり太刀ではない。しかし、目の前にあるモノは太刀と呼ぶよりも長い。

当主は言いました。


「これは虎鉄であり、虎鉄ではない。近藤勇が封印していた太刀…。名は牙狼。
それが本当かはわからないが、鑑定でも江戸時代のモノだとなった。
そして新たに鍛えなおしたモノが…これだ。これをお前に託す」


少年は焦りました。そのようなモノを、受け取っていいのかと。そして、疑問に思いました。


「…何故、それを俺に託すのですか?」


当主の答えは、少年が目指していた事の更に奥の真実を捉えていたモノだった。


「お前に相応しいからだ。これを入れてあった箱には、こう記されていた。

『汝この獲物を手にするのならば、その覚悟を決めよ。武器とは力を得る物。
しかし、それを使いこなすのは…武器を握る者。武器とは、生き物。主の意思に従い…敵を狩る力。
闇を払い、光を目指し続けられる者のみ、これを手にし、闇を斬り払い、光を手に入れろ』…と。

お前が向かっていくのは、闇だ。何も見えず、形もわからない。
だからこそ、その先にある光を掴むため、闇を超えるため…お前に、これを託す。
そして、その覚悟を決めた者が握ったとき、初めて武器は…真価を発揮する。
だから、新しい名。本当の名を付けてやれ。お前が手にした時…その太刀は、もう牙狼ではない」


少年は、やはり敵わないと思いました。

そして、改めて師の凄さを目の当たりにしました。

自分が考えている事の、さらに奥の真実を捉えている。

それこそが、少年が師に尊敬し、憧れたモノ。

だが、少年は師にはなれない。そう、同じにはなれない。何かが違ってしまう。

それでも、少年はその影を追う。

違ってもいい。師のように慣れなくても構わない。

師のように…人を確りとした道へと導き、その先を照らす術を齎せるのなら。

そして少年は言いました。


「…わかりました。しかとその力、託されましょう。
そして私は、ある伝へと向かいます。今まで、有難うございました。
さよならは言いません。人が人である限り、輪廻は廻り続けるのですから」


そう、笑顔で。

師もその答えに、満足しました。そして、今までの最高の笑みで、言いました。


「それでこそ俺が見込んだお前だ。頑張れ」と…。


そして少年は、旅立ちました。

まだ始まってもいない、本当の自分への一歩を…始めに。



投稿ありがとうございます。
美姫 「幼い少年はこれからどんな道を行くのかしらね」
これからどんな物語が綴られていくのか。
美姫 「これからの展開を楽しみにしてます」
待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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